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頸動脈狭窄症

首の部分で大動脈からの血液を脳に流す頸動脈に、動脈硬化が発生し頸動脈が細くなる病気です。これが原因で、脳への血流が低下したり、また狭くなった部分から血の塊が脳の血管に飛んで脳梗塞を引き起こしたりします。食生活の欧米化や運動不足などで、近年この病気は増えています。メタボリックシンドロームに代表される病気の結果引き起こされる動脈硬化は、心臓の血管、大動脈、手足の血管など全ての場所に発生します。各々の血管がたどり着く臓器には特有の機能がありますので、例えば心臓は循環器内科と心臓血管外科が、各々の専門知識を生かして治療を行います。頸動脈は脳へ血液を流しているので、当然神経の機能を良く知っている脳神経外科と神経内科がその治療を行います。当院では循環器科専門医が常勤しているので、必ず術前に冠動脈、大動脈の評価を行い、安全に治療可能かどうか確認してから治療を行っております。

この先は実際の手術写真が含まれている場合がございます。このような写真で気分が悪くなるような方はご覧になるのはご遠慮ください。

症状

動脈硬化を起こしたところから血の塊が脳の血管に飛ぶと、言葉が出にくい、手足がしびれたり、手足が動きにくくなることなどがあります。頸動脈が頭の中で最初に枝を出す血管が目を栄養する血管なので、一時的に片方の視力が低下することもあります。重要なことは、これらの症状が24時間以内に、多くは1時間以内に完全になくなることがあり、これを一過性脳虚血発作といい、これは脳梗塞が完成する前の「前ぶれ」とされています。最も重症な場合、意識が低下し麻痺などが一挙に完成する場合があります。その他、頸動脈が細くなり脳へ送られる血流のバランスがくずれ、前述した症状の他に、立ちくらみや、揺れるようなめまいを訴えることもあります。

以下に当てはまる方は外来でのMRAや超音波検査をお勧めします。

  1. 最近、一過性の麻痺やしびれがあり、すぐに(多くは数時間以内)改善した。
  2. 最近、どちらかの眼が急に見えにくくなり、または全く見えなくなり、すぐに(多くは数分以内)に改善した。
  3. 最近、急に呂律が廻らなくなったり、言葉がうまく出にくいことがあったが回復した。
  4. 過去に何回か繰り返して、脳梗塞の発作をおこしている。
  5. 心臓の拍動に一致した耳鳴りが聞こえるようになった。
  6. 血圧・糖尿病・高脂血症(コレステロールや中性脂肪が高い)・心筋梗塞や狭心症・下肢の閉塞性動脈硬化症・肥満・喫煙歴などの動脈硬化の危険因子を複数もっているが、一度も頸動脈の検査をしたことがない。

診断

1. 頸部血管超音波(図1)

首に超音波をあてて診断する頸部血管ドップラー検査です。検査に痛みは伴いません。動脈硬化の性質、血流の早さなどの質的診断も行え、良い治療方法が選択できるようになりました。

図1:矢印の部分が狭窄(プラーク)です。

2. 頸動脈MRA(図2)

図2:赤矢印が狭くなっている部位です。

3. 頸動脈CTA(図3)

造影剤を静脈に入れて、断層撮影を行います。外来で検査可能です。

図3:矢印が狭窄部位です。ある程度の狭窄の程度、病変の石灰化の程度などが分かります。

4. 血管撮影

治療上必要な場合は、頸動脈を直接レントゲンで撮影する血管撮影が行われます。この検査は一日入院が必要です。また血液が到達する脳の状態を調べるため、脳のCTや核医学による脳血流検査なども行われます。

治療

禁煙、運動・食事療法などに加え、高脂血症・糖尿病・高血圧に対する内科的治療が基本で、脳卒中を予防するためこれに血液の流れを良くする抗血小板剤が追加されます。ほとんどの患者さんは、生活習慣の改善とお薬の治療で、脳卒中の防止を行います。しかし頚動脈狭窄が高度となったり、狭窄が進行したり、症状が出現すると内科的治療に加えて、外科手術か血管内治療が追加されます。 外科手術は頸動脈内膜剥離術と呼ばれ、その名の通り狭窄の原因となっている血栓を変性した内膜ごと摘出してくる手術です。麻酔がかかった後、頸部に6-10 cm程の皮膚切開を置き、頸動脈分岐部を露出します。一時的に頸動脈の血流を遮断し(5-10分程)動脈切開後、内シャントと呼ばれるシリコンチューブを狭窄病変をまたぐようにして置き、脳血流を確保します。その後、丁寧に血栓と内膜を一緒にして摘出し、動脈壁に動脈硬化巣が残らないよう、顕微鏡を使用しながら剥離操作を続けます。残った外膜や血管径の状態で、内膜の縫合や血管の径を増すためのグラフト処置(継ぎ当て)が必要になることがあります。最後に内シャントチューブを抜去し、頸動脈・筋肉・皮膚と縫合し、手術は終了します。術野の術後出血を吸引するため、皮下にチューブを留置しますが、通常翌日に抜去します。 もう一つの治療として、頸動脈ステント術と呼ばれる方法があります。これは、太ももの付け根から血管の中にカテーテルと呼ばれる管を入れ、これは、細くなって詰まりかけている動脈に対して、血管の中から、風船(バルーン)付きカテーテルを用いて拡張しようというものです。さらにステント(金属の細いワイヤーを編んだような径7-10mm程の筒で、に柔らかく血管にフィットする)を拡張したあとに留置してきます。ステントは一生血管内で血管を拡張し続け、再狭窄を予防するとともに、血管の内側に新たな膜を形成し、動脈硬化巣を安定させる働きがあります。麻酔は穿刺部(大腿部または肘部)の局所麻酔と鎮静剤で済み、頸部の皮膚切開は不要です。(図4参照)要する時間は2時間程度です。この治療は歴史が浅いのですが、当院は2005年から積極的に頸動脈ステント術を行い、症例は300例を超えました。当院での合併症(脳梗塞など)は約2%程度と成績は良好です。

図4:黄矢印の狭窄は頸動脈ステント術後、緑矢印の様に良好に拡張しています。
 

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